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研究紹介


 吉澤が現在行っている研究のうち,主な物を紹介します(2016.3.3更新).論文リストも参考にしてください.
 また,学生に対する指導方針はこちらで説明しています


チャタテムシの体系学的研究
 僕もそうでしたが,ほとんどの人はチャタテムシの存在なんて知らないと思います.これは一般の人に限った話ではなく,昆虫を研究する人たちからも,チャタテムシは長いあいだ無視されてきました.そこで,チャタテムシの分類学的研究から,研究者としての第一歩をふみだし,現在にいたっています.これまで多くの未記録・未記載種を発見し,そのうちいくつかに名前をつけました.現在も,名前の無いチャタテムシに名前をつけてあげる作業を続けながら,チャタテムシの系統発生や生物地理学といった問題にも取り組んでいます.また,ここで紹介している他の研究テーマも,「チャタテムシ」という土台に立って,周囲を見回すことにより気付いた疑問がその発端になっています.チャタテムシ類についての説明はこちら

関連する主な研究成果
チャタテムシ,アザミウマ,半翅類の高次系統と形態進化
 チャタテムシ目,総翅目(アザミウマ),半翅目(セミ・カメムシ)は互いに近い仲間で,この中でもチャタテムシ目は特に原始的な形態を残しています.現在,チャタテムシとアザミウマやセミ・カメムシの形態を比較することで,セミやカメムシに見られる吸汁式口器(汁を吸う口)がどのような経路を辿って進化してきたのかを明らかにしようとしています.特に半翅目は,不完全変態昆虫最大の分類群で多様性にも非常に富んでいますが,吸汁式口器の獲得こそが放散の鍵となったと推測されます.したがって本研究は,半翅目の放散や多様性をもたらした背景を探る上で,重要な知見をもたらすものと期待しています.

関連する主な研究成果
昆虫の機能形態学
 外部形態,筋肉相,発生,行動,系統等々様々な観点を通して,昆虫の形態の進化的背景を理解しようと試みています.

関連する主な研究成果
シラミの起原の解明 (とりあえず一区切り)
 シラミ目(=ハジラミ類+シラミ亜目)は鳥類と哺乳類に外部寄生し,ケラチン質または血液のみを食物として,寄主の上ですべての生活・繁殖サイクルを完結する極めて特殊な昆虫です.シラミの起原の背景には,寄主である鳥または哺乳類の起源,栄養的に片寄った食物での生存を可能にする内部共生微生物との共生関係の成立,外部・内部形態の適応的大革新といった興味深いテーマがたくさん含まれています.現在私は,分子系統学的手法を用いて,シラミの系統的位置の決定,シラミの最初の寄主の解明,シラミの起源年代の推定を目指しています.現在までに,シラミとコナチャタテが単系統群を構成する事,つまりチャタテムシが側系統群である事が明らかとなりました.さらに研究が進めば,「恐竜に羽毛があったのか?」といったことも分かるかも知れません.

関連する主な研究成果
準新翅類の分子進化
 シラミの分子系統解析の過程で,シラミとコナチャタテのミトコンドリア DNA に,他の昆虫には見られない特異な進化傾向がある事を見いだしました.すなわち,(1)ミトコンドリア DNA の塩基置換速度が近縁昆虫(チャタテムシ目,半翅目)と比較し,約3倍速い(2)GC 含有量が近縁昆虫より有意に高い(3)リボソーム DNA に特異な二次構造が見られる.上記研究で明らかになった系統仮説に基づく事で,これら3つの現象が,互いに強く相関している事も明らかになっています.現在さらに追加実験を行っているところですが,このような特異な進化傾向をもたらした原因として,(A)寄生生活に関る適応的進化(B)弱有害突然変異の蓄積のいずれかが有力考えられています.なお,準新翅類のミトコンドリアの遺伝子配列が劇的に変化している事が Queensland University の Shao Renfu および Steve Barker らの研究グループによって明らかとなっていますが,この現象と上記1〜3の現象の間には,明確な相関は見られません.

関連する主な研究成果
シラミの形態進化
 シラミは上で述べた通り,その一生を寄主の上で過ごします.他の昆虫の生活する環境(季節変化があり,他の動植物がたくさんある)と違い,寄主の体の上は,温度や湿度も一定で,また周りの環境(毛や羽毛・皮膚)も単純です.ですから,シラミに見られる形態の違いは,その機能的理解が比較的容易にできます.シラミの系統発生像に,形態の変化や寄主の情報等を照らし合わせることで,シラミに見られる形態の違いが,どのような背景のもとで進化してきたのかを理解しようとしています.また,形態的にまとまった,われわれが「種」と認識するようなまとまりを生み出す背景も見えてくるのではないかと期待しています.

関連する主な研究成果
シラミの体系学的研究
 シラミに関しては,進化に関する面白いテーマが潜んでいるのですが,それらの基礎情報を与える分類や系統の研究は非常におくれています.特に日本では,50年近くシラミの分類学研究はほぼ停滞しています.分類屋として,この状況は放置できません.

関連する主な研究成果
系統推定の方法論
 系統情報を,余す事なく引き出すにはどうしたら良いだろう?ホモプラシー(ノイズ)によって覆い隠されたデータから,それらのデータが本来持っている系統情報を何とかして引き出す事は出来ないのだろうか?このような観点から,系統推定に関する方法論も検討しています.

関連する主な研究成果


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